「なんで……そんなこと言うの……?」


「別に深い意味は無い。ただ……空音のことを独り占めしたいだけだ。これくらいはいいだろう……?」


「へっ……?ひゃあ!」



抱きしめながら苦しそうに言う伊織はなんだか頼りなくて。私は伊織の背中に腕を回して抱き締め返した。


埋めていた顔をあげると、急に伊織の顔が目の前にあって。


気づいたら、私のおでこに……伊織のくちびるがあたっていた。


柔らかくて、暖かくて。


私のくちびるにあたっている訳では無いのに、まるでくちびるにキスをされているように感じた。



「い、い、今何をっ……!」


「ふはっ。すげー顔」



状況を理解した私はジンジンと熱を帯びるおでこに手を当て、伊織を睨む。


だけどそれは意味がなかったらしい。


私を見てくつくつと笑う伊織はとても楽しそうだった。おでこにキスをされたのに全く嫌じゃなかった。


むしろ、嬉しかった。


この気持ちを伊織に伝えたかったのに。