「ねぇ、知ってる?実はこのクラスメイトの中に吸血鬼がいるってウワサ!」

「え!?うそ!?」

「それって女子?男子?」

「そこまでは知らなーい」


「朱里ちゃんは誰だと思う?」

「わかんない。私、そういうの疎くて」

「そっかぁ」


「そもそもホントにクラスの中に吸血鬼がいるのかな?」

「あれ?霧姫さん帰るの?」

「最近、帰るの早いねー」


「コ、コンビニのバイト始めたから……」

「へー、そうなんだ」

「バイト頑張ってね〜」


「ありがとう。また明日」


放課後。私は教室を出ると気持ち駆け足である場所へと足を進めた。


今の時代、吸血鬼は珍しくない。


一昔前は都市伝説として扱われていたけど、今はクラスに1〜2人はいるくらい数は増えている。

とはいっても、吸血鬼は怖い存在として言い伝えられてきたから自分から極力関わりを持つ人は滅多にいない。


げんに悪いウワサしか聞かない。いきなり血を吸われたり、無理やり眷属にされたり、とか。


吸血鬼と関わらずに暮らせるならそれがいい。私だって残りの高校生活を平凡に過ごしたい。

と、以前までは思っていた。


―――あの人と関わるまでは。


ガラッ


「柊君、起きてる?」

「今にも死にそう。ていうかカーテン開けたらすぐ閉めてくれ」


「ごめん。すぐ閉めるね」


保健室のベッドで半分死にかけている彼の名前は(ひいらぎ)黒炎(こくえん)君。私と同じクラス。


そう、彼こそがクラスメートの女の子たちがウワサしていた吸血鬼。一日の半分以上をこの保健室で過ごしている。

なんでも太陽が出ている時間帯は体調が優れないとか。


「霧姫、いつもの」

「ちょっと待ってね」


それは吸血鬼にとって必要不可欠なモノ。


「やっぱり男の子の前で肌を見せるのは恥ずか……」

「心配しなくても霧姫の肌は綺麗だぞ」


私の言葉を最後まで聞く前にこれだ。