「じゃあ、ご飯いこっか」
「うん…」
「何食べたい?」
ちょうど別の映画も終わったらしく、
エレベーターの前に
帰る人の列ができていた。
「うん…」
「笹川ー?どしたー?」
「うん…     
え、あ、ごめん、何?」
「……」
清水は足を止めた。
「映画間違ったこと、そんなに怒ってる?」

いつも話すときは大体、
爽やかな笑顔を向けてくれる清水が、
ちょっと不機嫌な顔をしていた。

「え?ううん!全然怒ってない」
「でも、さっきから様子おかしくない?
何かあるなら言って」
「何もないよ」
「何もないなら、そんな顔しない」


なんで上手くいかないんだろう。
清水にかわいいところ
見せたいだけだったのに。


その時、さっきみた映画のことを思い出した。
主人公は、想いを寄せる人が、絶対自分のものにならないと
分かっていながらも、自分の気持ちを伝えていた。


このまま仲たがいしてしまうくらいなら、
全部うちあけて、潔くふられて、
また明日から『ただの同期』という関係で
いいんじゃない?



「あのさ、実は…私……