「宮森…くん」
「何気に名前呼ばれたの初めてだわ」
「仕事であんまり関わりないもんね」
「だな。つーか、『くん』は
いらねーから」
「え…じゃあ…み、宮森…」

男子の名前を呼び捨てなんて、
今まで経験ないし…
そもそも男子の名前を呼んだこともあまりないのに…

「なぁんだよ、暗い顔してよぉ!」

宮森はそう言って笑いながら私の肩に腕をまわす。
普通に近くてドキッとする。

「やめてよ」
「なんで?」

宮森は私たち同期と接する時、いつもこんなだ。

男女関係なく距離が近い。
心の距離だってガンガン詰めてくる。

だけど、陰キャ育ちの私は、そもそも男子と話すことすら
してこなかったから免疫がない。

こういうことは、いちいちドキドキするから
やめて欲しいのに。

好きとかそういうんじゃない。
慣れてないだけなんだ、私は。

きっと男の子慣れしている女の子たちは、
こんなにドキドキしないんだろうな。

欧米の人たちが、あいさつでハグやキスをする感覚で。