とある会社の色んな恋



山本くんが私の肩に手を回し、
耳元でささやいた。

「え…」
「俺いい店知ってるからさ、二人で飲みなおそうよ」

ちらっと碧斗の方に視線をやると、
私といる時と同じ、無邪気な笑顔で、
会田っちに最近ハマっている
ゲームの話をしている。

なんか…むかつく。

なんで、その笑顔は
私だけのものじゃないの?
今日会ったばっかの女子に
そういう顔見せないでよ。
よく知りもしない女子と、
そんな楽しそうに話さないでよ。

「な、行こうぜ」

山本君が私の鞄をこっそり手渡してきた。

「あ……はい」

正直言うと、
山本くんとは友達以上の関係にはなれそうにない。

だけどその時、もやもやした気持ちが
私の背中を押してしまった。

きっと、碧斗を焼かせたかったんだろうけど、
私は確実に誤った行動にでてしまった。

そのまま、山本君と二人で、
夢中でおしゃべりする碧斗と会田っちを残し、
店を出たのだった。