「真美ちゃんってさ、
しっかりしてるよなー。
夕飯終わった後の
お母さんみたいな立ち振る舞い」
山本くんが話しかけてきたおかげで
碧斗が言いかけた言葉が最後まで聞き取れなかった。
『でも』何て言おうとしたんだろう?
「あ…お母さん…ですか」
「あ、いや、いい意味だよ?
家庭的でいいなーって」
「そうですかね…」
こういうの、
家庭的に思われたいからじゃなくて
無意識にやっちゃうんだよね。
「店員、喜ぶだろうな。
助かるって」
「どうでしょう…
いつもやりすぎて、店員さんに注意されることもあるので、
気を付けてるんですけどね」
「そんなことあんの?」
「片付けの時の決まりとかあるからこっちでやります、みたいな」
そういう時、「ああ、やってしまった」って
自分の短所にがっかりするけど、
碧斗がその場にいると、
「まーちゃんのこういうところが好き」
だなんて自然に言ってくれる。
……ってまた、碧斗のこと。
あんなに喧嘩しても
ふとした時に思い出されるのは
碧斗との嬉しい思い出だけ。
そもそも……
なんであんな大喧嘩になったんだっけ…?
「な、草津と舞子ちゃんいい雰囲気だし、
邪魔しないように俺らこっそり抜けない?」



