ほら、やっぱり。
うまくいきすぎてたよ。
その分不幸がくるって分かってた。
そもそも、恋愛なんて
うまくいったためしがない私が、
こんな素敵な人に
近づくこと自体が間違ってたんだ。
身の程しらず。
やめよう。諦めよう。
もう独りでいいや。
でも、最後に言わせて欲しいことがある。
「秋野さん!」
「……何ですか?」
「私が入社したての時、
コピーすらできない私を、
みんなは冷たい目で見たけど、
秋野さんだけは笑顔で
コピー機の使い方を教えてくれた」
秋野さんは目を閉じて頷いた。
「先代社長のお葬式の時、
私だけ勘違いで
別の式場に行っちゃって、
電話で部長に散々怒られて、
泣きかけてたけど、
秋野さんが迎えに来てくれて…
大丈夫だよって言ってくれた…
すごく嬉しかった…」
秋野さんは目を閉じたまま、ふっと笑った。
「課長の重要なプレゼン資料を
間違って消去した時も、
会社を辞めようかと思ったけど、
秋野さんがデータ復元してくれて…」
「あったね、そんなこと」



