ポケットに未練がましい恋歌を



「たくさんの人の前で歌うチャンスを、掴み取ったよ。
 今まで俺の夢を支えてくれた、ひよりのおかげ。
 ありがとう」

「大弥くんが頑張ってきたからだよ。
 おめでとう」

「ひより、俺のところに帰ってきてよ」

「莉緒…さん…は?」

「なんで莉緒?」

「莉緒さんがこの家に来た時に、言ってたから……
 大弥君は、莉緒さんの家に泊まってる。
 私と別れて、莉緒さんと付き合ってるって……」


はぁ?

莉緒の奴、なんでそんな嘘をひよりに吹き込んだんだよ!


「違う! 
 俺は雅成の家のスタジオで、寝泊まりをしてたんだ。
 曲作りに集中したくて」

「信じていいの?」

「ああ。雅成だけじゃない。
 会社の人もみんな知ってる。
 ひよりに会わせて、証言させようか?」

「そこまでしなくていいよ。
 大弥君の言葉、信じることにしたから」