ポケットに未練がましい恋歌を



『俺にとっての宝物』

それは失ってみないと、自分にとってどれだけ大事なものか、気づけないのかもしれない。


俺だけに向けてくれる、ひよりの笑顔。

仕事を終えた俺がバンドに専念できるように、家事を全部引き受けてくれていた、ひよりの優しさ。

それらはいつの間にか、俺の中で『当たり前』になっていた。


感謝をしている。それなのに……

そんなこと、いちいち言葉で伝えなくてもいい!

そう思うようになって。


カレンダーのポケットに入れるラブレターも

毎日って面倒くさいなぁ。
書かなくても読まなくてもいいか。

メッセージカードですら、雑に扱うようになって。


ひよりは優しい。

面倒くさがり屋の俺を、丸ごと愛してくれてる。

これくらいじゃ、俺を嫌いにならないよな?

都合のいいように解釈して
ひよりからの想いを、俺は踏みにじってきたんだ。