ポケットに未練がましい恋歌を








それから数日間、会社に行くだけの日々が続いた。

仕事を終え、アパートに帰り、ひよりからのメッセージを待つ。


死神に魂を抜かれたような、無表情の俺。

ベッドに横になり、スマホと睨めっこをしていると

いきなり、スマホの画面が明るくなった。


「ひよりから?」

俺の心に、かすかな期待の火がともる。


でも……

「なんだ、雅成からかぁ……」

期待しただけに、心のダメージが半端ない。

雅成からのメッセは、興奮気味だった。


『牧野さんから連絡が来たぞ!
 出れるって、うちらのバンドが!
 あの日本最大級の野外フェスに!』


「……へぇ」

俺の口から、やる気のないため息が漏れる。


一ミリも喜びが沸き上がらないのは

俺の心が、ひよりという光を失い
闇をさまよい続けているせい。


今、俺の隣にひよりがいたら……

『やっと、大弥くんの音楽が認められたんだね!
 嬉しい! すっごく嬉しいよ!』

ひよりは大粒の涙をこぼしながら、大喜びをしてくれたに違いない。