むふむふ

「涼音さんのお父様か」

 潔はあらためておじさんの顔を見る。笑った目元となんとなく薄幸そうなところが涼音にそっくりだった。おじさんは後頭部を掻き掻き言った。

「あの人たち怖い人のフリしてふざけてるだけなんです、全然うち怖いところじゃないんで。私もね、親分とかそういうのじゃなくて、普通の会社の普通のケチな成金なんで、あの、涼音の友達を怖がらせないようよく言っときますから、ネットに悪口とか書かないでくださいお願いします」

 無風が慌てて「お父さん大丈夫です、僕らネットとかそういうの分からないんで、悪口なんて書きませんから」と謎のフォローを入れて、へこへこ頭を下げる武宮氏を車まで送って行った。無風を見た運転手が、ぽろっと「えっタイツ?」と言った。

「師匠のヤツ」

 と、潔は無風にこぼす。

「おおかた部下の人が来そうになったから逃げたんだ。そんな時ばかり勘がいいんだから」
「面白い人たちでしたね」

 無風は引き攣った顔で言った。そんな無風の肩を、潔はぽんぽんと叩く。

「怒っていいんだからな」