むふむふ


 無風は一連の出来事が飲み込めず、しばしぼんやりした。

「付き合わせて悪かったな、無風君」

 額に爽やかな汗を滲ませ、潔は笑う。

「あらためて紹介しよう。彼は師匠だ。本名は知らん」
「師匠でーす。よろしくー」

 師匠は自ら師匠を名乗り、間延びした挨拶をする。

「むふ、むふむふ」

 伝わらないなりに無風も挨拶をしたところ、「へえ、無風君っていうんだ」とあっさり返される。

「師匠、無風君の言葉が分かるのか!?」
「あー、分かる分かる」

 これは心強いとばかりに潔は身を乗り出す。

「彼を人間に戻す方法に、心当たりは無いだろうか」
「うーん、無いね!」

 師匠はにこやかに切り捨てる。

「師匠だからって何でも知ってるわけじゃないからね!」
「そうか……師匠でも知らないか……」

 潔は難しい顔をした。