むふむふ

 銀髪──『師匠』は、無風を見るとおや、という顔をした。

「なんだいこれ? 随分可哀想なのを連れてるじゃないか」

 その言葉に、潔ははっとする。

「何か分かるのか!?」
「分かるもなにも、これ人間でしょ。どうやったらこうなるの。変な物でも食った?」

 正解過ぎてぐうの音、いやむふの音も出ない。
 無風は恥ずかしくてこのまま風にふっ飛ばされてどこか行ってしまいたい気分になった。

「いやあ、ここで師匠に会えて良かった。彼を人間に戻したくて困っていたんだ。それに、丁度身体も動かしたかったところだし」

 一行は広い河原に移動した。
 そして、潔と師匠が一定の距離を取って向かい合い、一礼をしたかと思うと──それは始まった。
 どちらが先に仕掛けたか、無風の目にはわからなかった。
 拳を突き出し足を突き出し、互いにそれを躱す。時に軽やかに飛び上がり、相手の攻撃をいなす。凄まじい速さで行われたそれらの応酬の、ただ空を切る音だけを無風は聞いた。
 それがしばらく続いたかと思うと、二人は元の位置に戻り、再び一礼。

「動きに無駄があった」

 と、師匠はさらりと講評した。

「その毛玉を気にしながらだから、仕方ないけれど」

 うむ、と潔は納得したように頷いた。

「ありがとうございました」