むふむふ

「戻らないものを戻せって言われても無理な話だ。ケータイショップのクレーマーかお前は」

 文藏はぼりぼり頭を掻いた。

「そういうことはやれることを全てやってから言うもんだ」
「思いつかねーよやれることなんか」
「その、無風君が飲んだという粉ジュースはもう無いのか」

 二人と一匹は文文堂の住居部分に入った。
 無風が棚の前に行き、「むふ!」と叫ぶ。ここに入っていたと言いたいのだ。
 潔はそこを片っ端から開けていく。
 夢に出そうな目つきのこけし。
 大量の五円玉の穴に紐を通して輪っかにしたもの。
 古いアニメの絵が描かれたトランプ。
 錠剤、カイロ、湿布、湯呑み、輪ゴム、ゼムクリップ、ポケットティッシュ、テレフォンカード、でかい埃、欠けた湯呑み、ちびた鉛筆、単三電池……。

「無いな……」
「むふ……」

 大小のがらくたを畳の上に並べ、潔はため息をついた。

「あ、こんなところにあった。儂、めちゃくちゃ好きだったんだよねこの子」

 文藏は水着姿の昔のアイドルが微笑んでいるブロマイドを見つけて嬉しそうに壁に飾った。