むふむふ

「大事な孫がこんな目に遭っているのに、どうしてそんなに呑気なんだ!」

 潔は文文堂がぶっ壊れて展開図にならんばかりの勢いで文藏を怒鳴りつけた。

「早急になんとかしろ。可哀想だろうが!」

 文藏は、えー、萎えるぅ、みたいな顔をした。

「だってよぉこいつが変なもの飲まんかったらこんなことになってないんだぜ? 責任取れねえよ儂」
「明らかに変じゃ済まないものを所持しておいて開き直るな!  心配するふりもできんのか? 無風君がどんなに苦労しているか知らないわけでもあるまい。排泄だって一人でままならんというのに!」
「むふ!むふ!」

 帳場台の上で無風が転げ回っている。
 今の「むふ!」はすみません排泄のこととかあんまり言わないでもらえませんかの意だが、当然潔には伝わらない。
 無風を預かることとなった神矢家には、急遽ペットトイレが用意された。潔が世話する気満々だったのだが、それは周が引き受けた。無風の心情と姉のデリカシーの無さを察した周の計らいである。ペットトイレは周の部屋に設置された。申し訳なさそうにする無風に、周はにっこり笑って「そんなこと気にしないで。お兄ちゃんとペットが同時に出来たみたいでうれしい」と言ったものである。
 文藏はここに至って初めて見せたと言っていいくらい同情的な眼差しになった。

「無風、すまなんだ。そこまで苦労しとるとは思わなんだ」

 日常の不便どうこうというより潔の物言いがはっきりし過ぎていることに対する同情であった。

「お前やばくね? やっぱり周ちゃんの方が良くね?」
「それを言う前に普通の人間に戻せ」