すっかり冷めてしまったお茶の残りをぐっと飲むと、彼はひと息に言った。
「潔さんは面白い……というのとは違いますけれど、俺にとってはずっと尊敬してきた人なので、申し訳なくはないです。というか、俺は潔さんが好きです。なので、正直こんなに嬉しいことはないって思ってます。こればっかりは爺ちゃんありがとうっていうか」
「はあ……」
「でも、潔さんには、ちゃんと俺を好きになって欲しい。そんな諦めるみたいに結婚したら、潔さんが幸せじゃないから」
諦めるみたいに?
潔はその時、自分の振り返るというほど長くもない人生を振り返っていた。
どうやら自分は誰かに好かれる人間ではないと、潔は思っている。
大きな理由があるというより、小さな出来事の積み重ねである。
いわゆる女性らしい可愛げ、がごっそり欠けた女性。それが自分だ。文藏が言っていたとおり、いっそ弟である周の方が可愛いくらいなのである。諦めるというなら結婚それそのものの方をこそ諦めていたところだ。
「なにも諦めて結婚を選ぶというわけでもないさ」
「俺は、潔さんに俺を好きになってもらうことを諦めません」
「君は──」
潔は無風の方を向いた。
座布団の上に、黒い毛玉が載っていた。
「潔さんは面白い……というのとは違いますけれど、俺にとってはずっと尊敬してきた人なので、申し訳なくはないです。というか、俺は潔さんが好きです。なので、正直こんなに嬉しいことはないって思ってます。こればっかりは爺ちゃんありがとうっていうか」
「はあ……」
「でも、潔さんには、ちゃんと俺を好きになって欲しい。そんな諦めるみたいに結婚したら、潔さんが幸せじゃないから」
諦めるみたいに?
潔はその時、自分の振り返るというほど長くもない人生を振り返っていた。
どうやら自分は誰かに好かれる人間ではないと、潔は思っている。
大きな理由があるというより、小さな出来事の積み重ねである。
いわゆる女性らしい可愛げ、がごっそり欠けた女性。それが自分だ。文藏が言っていたとおり、いっそ弟である周の方が可愛いくらいなのである。諦めるというなら結婚それそのものの方をこそ諦めていたところだ。
「なにも諦めて結婚を選ぶというわけでもないさ」
「俺は、潔さんに俺を好きになってもらうことを諦めません」
「君は──」
潔は無風の方を向いた。
座布団の上に、黒い毛玉が載っていた。



