むふむふ

 あれよあれよという間に全身にひどい風邪のような違和感が出始め、文藏に助けを求めることもできずに、無風は意識を失った。

「気づいたらこれです」
「どれだよ」

 何を聞いても理解が及ばない。ならば理解を諦める他ない。

「人間に戻った時に、ぜ……全裸じゃないのがせめてもの救いというか」

 もじもじしながら言う無風を見る潔の目には大いなる哀れみが宿る。全身タイツ(それ)を救いと呼ぶなら、この世に救いは無い。
 無風はふと、真っ直ぐに潔を見た。

「俺はこんな風になってしまいましたが、潔さんは相変わらず綺麗ですね」
「急にどうした?」

 怪訝そうにする潔に、無風はきっぱりと言った。

「急ではないです。少なくとも、俺にとっては」

 曇りのない眼差し。
 通った鼻筋。
 透き通るような白い肌。
 きりりと結ばれた唇。
 誰がどう見ても、無風は美しい顔をしていた。
 ──全身タイツの違和感に、その美貌が競り負けてさえいなければ。