「あぁ、帰ろう! 俺は勘違いをしていたんだ! おまえがジェシーに嫉妬をしていると――――次期王妃の座を脅かされて、嫌がらせをしていると思っていたんだ。
まぁ、お前がジェシーを悲しませたことは紛れもない事実だし、こんな辺鄙な国で数ヶ月過ごしたんだ。もう十分に罰は受けただろう! 
それに、おまえには聖女の力など無いと、何人もの人間が忠言していたし……」

(……はぁ?)


 聞きながら俺は、腸が煮えくり返りそうだった。
 アーシュラ様がそんなことをするわけがない。彼女は思ったことを相手にきちんと伝えるタイプだ。それが良い感情であれ、悪い感情であれ、きちんと向き合おうと努力なさる。嫌がらせなんて絶対にしない。断言できる。

 そもそも、アーシュラ様という婚約者がいる身で、浮気なんてするバカ王子が全て悪い。
 顔もスタイルも中の下のこの男に、アーシュラ様は勿体なさすぎる。本気で身の程知らずだ。

 それに、アーシュラ様が聖女の力を持つことは、彼女と一緒に居れば明らかだ。人柄、優しさ、高潔さ、その崇高な理念からも疑いようがない。あいつは見る目がない。いや、見てすらいなかったんだろう。

 けれど、何よりも腹が立ったのは、先程からこの男が言い分ばかりを口にし、一度もアーシュラ様に謝っていないことだった。