伊吹くんの”好き”って単語が出てきて、思わずドキッとする。
「それ、フォローになってないけど」
「そう?」
伊吹くんはまだ面白いのか顔が笑っている。
「じゃあ、今度俺のために作って」
「へ?」
「新奈が作ったお弁当食べてみたいなー」
伊吹くんは私にお願い事をする時、決まって顔を覗き込んでくる。
その仕草がいちいちカッコよくて、かわいくて。
本当にずるいなって思う。
「んんーーー分かった!作ってみるけどあんまり期待しないで」
何を隠そう、私は料理が得意ではない。
今日のお弁当もお母さんが作ったものだ。
でもそんなこと言ったら、食べる専門と思われて、もっと笑われそうと思って口を閉じた。
「嬉しい。めっちゃ楽しみ」
伊吹くんの笑顔に私も引っ張られる。
そんなに嬉しそうにされたら、なんかもう、どうしたらいいか分からなくなる…。



