「新奈ってひどいよな。俺、新奈のこと待ってたのに」
「いや、勝手に待たれても」
「ひどい」
そこにはいつもみたいに、いじける伊吹くんがいた。
上目遣いで見てくる伊吹くんのあざとさが、今は憎い。
「傷ついたから責任とって」
伊吹くんはそう言って私の髪に自分の指を絡めた。
「っ…」
近い…。
伊吹くんとの距離感にぐっと心拍数が上がってしまう。
「やめてよ…」
私はそう言って伊吹くんに背を向けた。
こんなことで動揺する自分を見られたくなかった。
「名前、呼ばなかったから罰ゲーム」
デート初日に伊吹くんは言っていた。
名前を呼ばなかったらキスするって。
でもそれは半分冗談だって思ってた。
「は?それ言ったら伊吹くんだって…」
私が振り返るのと同時に、私のほっぺたに伊吹くんの唇が触れた。



