無我夢中で廊下を歩く。
歩くと言うより競歩に近い感じだったと思う。
できるだけ早く、あの教室から離れたかった。
余計な情報を自分の中に入れたくなかった。
「井上さん」
だから聞こえていなかった。
「井上さんてば」
まさか伊吹くんが私を追って来てるなんて思ってもみなかったから。
「待ってよ、新奈」
新奈って声が聞こえて、私は足を止めた。
びっくりして振り返ると、伊吹くんがすぐ近くまで来ていた。
「ちょ、急に止まるとびっくりすんじゃん」
私にぶつかりそうになるくらい近くまで来ていた伊吹くん。
「私のこと呼んだ?」
「呼んだ。たくさん呼んだ」
「うそ、ごめん気がつかなくて」
「わざとやってるのかと思った」



