年下御曹司の箱入り家政婦

「ちゃんと違反ギリギリの
スピードだから大丈夫だよ」

僕はそう言いながらもアクセルを踏む足を少し緩めた。

「ここ数日、櫻介機嫌がいいよな。
もしや羽菜さんと進展でもあった?」

斗真はニヤニヤしながら運転席を覗き込んでくる。

こと恋愛に関しては友人に対しても秘密主義の僕だが斗真だけは羽菜ちゃんと唯一面識があるのだ。

「あってもお前には言わない」

僕は片方の手で斗真のおでこを
ペチッと叩いた。


「相変わらずもったいっぶりやがって…」

斗真はおでこを(さす)りながら呟いた。

その時、

「まだあの女のこと追っかけてるの?」

助手席に座って話を聞いていた平尾蘭(ひらおらん)
不機嫌そうに口を挟んできた。