「そんな嘘が通用すると思う?」

私は櫻ちゃんを人差し指で
さしながら詰め寄る。

櫻ちゃんは私の人差し指を掴むと
「うん。通用するよ。」
飄々とした態度でこたえる。

「櫻ちゃん、ふざけないでよ。」

私は怒りでプルプルと震える。


櫻ちゃんは私にお構いなしにクスリと微笑むと私の顔を両手で包みこんだ。

「通用するのは僕だけだけどね...」

そして、「だめ...」
と顔を横に反らそうとする
私の顔をグイッと引き寄せて
再び唇を塞いだ。

「ん。んん...」

櫻ちゃんの舌は私の口内に強引に
割って入ってきて容赦なく舌を絡めてくる。


「は...んん......」


「羽菜ちゃ···」

櫻ちゃんは足りないといったように
私の唇を貪るように求めてくる。

息づきも許して貰えない私は
櫻ちゃんの服を思わずギュッ掴んだ。


櫻ちゃんはひとしきり口内を堪能すると
そっと唇を離した。

「はぁ......羽菜ちゃん......」

櫻ちゃんは肩で息をしながら
憂いを帯びた瞳で私を見つめると
そのままギュッと自分の胸に
抱き寄せた。

私は櫻ちゃんに抱き締められたまま
「もう呆れて怒る気にもなれないわ...」
と、大きくため息をついた。

「ごめんね...羽菜ちゃん。
僕だけの羽菜ちゃんでいてほしいのに
他の男に取られるのが恐くてたまらないんだ。
触れていないと不安で押し潰されそうになるよ。」

櫻ちゃんの私を抱き締める腕に力がこもる。

「櫻ちゃん...」

「ぼくのこと嫌いになった?」

「嫌いになんてなれないよ...」

「羽菜ちゃん...
僕もっと頼れる大人の男になって
羽菜ちゃんを支えられるように頑張るから」

その言葉を聞いて私は櫻ちゃんからそっと体を離した。

「櫻ちゃんは今のままでいいよ?
わがままで単純で子どもっぽい櫻ちゃんが
私はいい」

私は優しい笑みを櫻ちゃんに向ける。