年下御曹司の箱入り家政婦

「羽菜ちゃん、ここへ座って!!」

腕組みをした櫻ちゃんが
自分の向かいの席に座れと
コンコンと指で叩いた。

「何よ...話すことなんてないったら...」

私は面倒くさげな表情を浮かべると渋々、
櫻ちゃんの向かいの席に腰を下ろした。

「あの男になんて言われたのか
一言一句正確に答えて。」

「い、いやよ。そんなこと!
それにそんなこと櫻ちゃんに教えてら
勇気を振り絞って告白してくれた
新さんに失礼だわ。」

「ムカつくから、
あの男の名前を羽菜ちゃんが口にしないでよ」


「自分から話せって言っておいて...
私にどうしろと言うのよ?」


「羽菜ちゃんは自分が可愛いってことを
もっと自覚して気をつけてくれなきゃ困るよ」


「はい?何を気をつけるっていうのよ?」


「他の男に不用意に笑顔を向けて
誘惑しないで!」


「誘惑なんてしたことない!」


「そういう無意識に誘惑してしまうところが問題なんだよ。
他の男に笑顔を振りまくことを今後禁止します!」

身勝手に断言する櫻ちゃんに
私は憤慨したように勢いよく立ち上がった。

「そんなこと出来るわけないでしょ!
話にならないわ!!
もうこの話は終わり!!
私、お風呂入ってくる!!」


「あっ!羽菜ちゃん逃げる気?
話はまだ終わってないよ?」

私は櫻ちゃんの言葉を無視して
隣の部屋に向かうと箪笥からパジャマと下着を取り出してお風呂場へと向かう。

途中、リビングを通ると
「こんなんじゃ、
明日から心配で仕事なんてできない(泣)」と櫻ちゃんは大袈裟に叫びながらソファー
突っ伏していた。

私はその白々しい演技を横目に
なんのフォローもせず素通りした。