年下御曹司の箱入り家政婦


私が牛丼のプラスチックのドンブリと
箸をダイニングテーブルに並べ始めると
櫻ちゃんが上機嫌で椅子に腰を下ろした。

「そういえば今日定休日なのに
なんで出勤だったの?」

私が二人分のコップに麦茶を注いで
いると向かいの椅子に座っている
櫻ちゃんが問いかけてきた。

その瞬間、私の心臓がドキりと跳ねた。

「う、うん...。
今日は休日返上でパンケーキの作り方を教えてもらってたの。」

今日の新さんの出来事を思い出して
思わず、声がうわずってしまった。


「ふ~ん」

櫻ちゃんの低温ボイスが何かを悟ったようにリビングに響いた。


「さ、食べましょう!いただきまーす」


私は詮索されたら面倒だと
何事もなかったかのように明るく振る舞う。


「・・・・・・いただきまーす」


櫻ちゃんは何かを探るように
じっと私を見つめながら
無言で食べ進めている。


・・・・・・・・


私は櫻ちゃんの突き刺すような視線に
気づかない振りをして黙々と
牛丼を食べ続ける。


このまま、大人しく何も聞かないで...

そう願っていたが、あと数口のご飯を残したところで櫻ちゃんが口を開いた。


「あの、アラタって人に教えてもらってたの?」


ドキーーーーン!!


「う、うん。そうだよ!」


私の心臓は飛び出しそうになったが
さも平然とした態度を取り繕って
残りのご飯を食べ進める。


「二人で?」


うわぁー、そこをついてきたか。


内心絶叫しながらも
「そうだよ」と最後のひと口を
口に放り込んだ。

私の言葉に櫻ちゃんは苦虫を噛み潰したように不機嫌に顔を表した。