年下御曹司の箱入り家政婦

寝室のドアを開けると
羽菜ちゃんはベッドの上で
こちらに背を向けて猫のように丸まっていた。

「羽菜ちゃん...?」

控えめな声で羽菜ちゃんを呼んでみたが
返事は返ってくることなく
肩は規則正しく上下にゆっくりと動いていた。

ぼくは嫌な予感がしてベッドに駆け寄ると
「羽菜ちゃん...?」もう一度声をかけながら羽菜ちゃんの顔を覗きこんだ。

羽菜ちゃんはスースーと
気持ち良さそうに寝息をかいていた。

いつもなら、この愛らしい寝顔を
何時間でも見ていられるが
今日は状況が違う。

「羽菜ちゃん、おきて」

僕はワサワサと少し控えめに
羽菜ちゃんを揺さぶった。

羽菜ちゃんはう~ん...と身動ぎながらも
その目を閉じたまま開くことはない。

「羽菜ちゃん、せっかくホテルに泊まってるんだから少しは話そうよ」

僕は今度は少し強めにもう一度揺さぶった。


「うーん...櫻ちゃん...なに?」

羽菜ちゃんは眠りを邪魔されて若干煩わしそうに目を擦りながら体を起こした。

「何じゃないよ!せっかく羽菜ちゃんと
沢山話そうと思って楽しみにしてたのに」

「だって、櫻ちゃんお風呂長いんだもん」

羽菜ちゃんはむぅーっと口を尖らせた。

そして「もう今日は沢山遊んで疲れたから櫻ちゃんも早く寝て明日の朝沢山話そうっ!ねっ?ということでおやすみっ」そう言うや否や、羽菜ちゃんは布団をかぶって目を閉じた。

「あっ!コラッ、夜に布団の中でおしゃべりするからいいんだよ!朝に話したって意味ないじゃん!起きてよっ」

僕は必死に羽菜ちゃんを揺さぶるが羽菜ちゃんはギュッと目をつぶり、両手で自分の耳を塞いでいる。