年下御曹司の箱入り家政婦

遊園地を十分満喫した私たちは
櫻ちゃんの予約した夜景の見える
イタリアンレストランで食事をしていた。

「ねぇねぇ、羽菜ちゃん?
さっきのキスはどういう意味?」

「だ、か、ら、何度も言ってるでしょ
ご褒美だって」

「本当にご褒美の意味だけ?
別の感情はなかった?少しも?」

あのあと櫻ちゃんは少しの間
ボーッとしてたかと思えば
今度は質問攻めの嵐だ。
何度、ご褒美のキスだと説明しても
納得せず、ずっと堂々巡りをしている。

「ご褒美にキスしただけ!
せっかくレストランに来てるんだから
黙って食べなさい。」

「いやだ!
羽菜ちゃんがただのご褒美って
だけでキスするわけがない。
ちゃんと僕が納得いく説明するまで
何百回でも聞くから」

「櫻ちゃんてしつこいよね」

私はわざと嫌味っぽく言った。

「しつこくなきゃ、
9年も片思いなんてできないよ。
ほら、ちゃんと自分の胸に手を当てて
よ~く、考えてみて!
さっきのキスに恋愛感情はなかったのか」

そう言って、櫻ちゃんは自分の胸に手を当てて見せる。

櫻ちゃんがこうなってしまったら
自分が納得いくまで頑として譲らない性格は今まで嫌というほど思い知らされている。

私はハァっと大きく溜め息をつくと
ナイフとフォークを置いて
目をつぶると自分の胸に手を当てた。