任せてって、あの部屋の惨状を目にしたら
信用はできないのだけれど
気分よさそうにご飯を食べる櫻ちゃんを
見ていると、まぁいっか...と思えてくる。

「櫻ちゃん、時間大丈夫?」

私は気になって時計に目を向ける。

「えっ?あっ!ヤバい」

櫻ちゃんは時計の時間を確認して、
慌ててご飯をかけ込んだ。

そして、口をモグモグさせながら
「ごぢぞうさまでじだ」と手を合わせた。

櫻介はすぐさま立ち上がると
「羽菜ちゃん、美味しいかった。ありがとう」と窓から出ようとするので
私は「ちょっと待って!」と慌てて呼び止めた。
「これシナモン入りの生姜紅茶なんだけど
風邪に効くから飲んでね」

私は用意していた水筒を櫻ちゃんに手渡した。

「羽菜ちゃんありがとう」と嬉しそうに頬笑む櫻介は「あっそうだ!」とふと思い出したように言う。

羽菜が「えっ?」と首傾げると
櫻介は腰を屈めて
羽菜の唇にチュッと軽くキスをした。

「キスって免疫力が上がるんだって!
じゃあ、行ってきまーす」

櫻介は悪戯に笑みを浮かべると
茹でダコのように顔を赤く染めた羽菜を残して出て行った。

櫻ちゃんのキス魔め...

油断も隙もない...

羽菜はしゃがみこむと
膝を抱えて赤い顔を隠すように
突っ伏したのだった。