年下御曹司の箱入り家政婦

「羽菜ちゃん 、何故敬語...?」

怒られるのを覚悟していた櫻介は
急にしおらしくなった羽菜を
キョトンと不思議そうに見上げた。

「何でもありません!」

何でもないと言うわりに、
目を合わせようとしない羽菜の視界に入るため「おーい、羽菜ちゃん?」と覗き込むが、フッとかわされる。



羽菜は櫻介の視線を避けるように
さっさと部屋を出ていこうとする。

「羽菜ちゃん!!」

櫻介はいつもと違う反応の羽菜に
不安を感じて
思わず呼び止めた。

羽菜はビクッと肩を震わせると
ドアノブに手を掛けたまま、
櫻介を見た。

やっと、目があった...と目を細める櫻介。

「ご飯ありがとう。美味しかった...」


羽菜はコクコクとロボットのように
頷くと「おやすみなさい」と一言だけ呟いて
出て行ってしまった。


一人取り残された櫻介は
誰もいないドアに向かって
───おやすみなさい、大好きだよ....
と呟いていた。