年下御曹司の箱入り家政婦

櫻ちゃんの部屋に戻ると
櫻ちゃんはさらに苦しそうにゼエゼエと
肩で息をしていた。

私は櫻ちゃんの洋服ダンスから
適当に着やすそうなシャツを取り出す。

「櫻ちゃん、辛いけど起きて水分取って」

私は櫻ちゃんの背中に手を添えて起き上がらせると、スポーツドリンクのペットボトルの蓋を開けて櫻ちゃんに手渡した。

櫻ちゃんは相当喉が渇いていたのか、
500ミリリットルのペットボトルを一気に飲み干した。

取り敢えず、これで脱水症状になることはないだろう...

私はホッと肩を撫で下ろした。

「はい、じゃあタオルで汗を拭いてこれに着替えてね!」

私はタオルと着替えを櫻ちゃんの手のひらにのせた。

「えっ?羽菜ちゃん着替えさせてくれないの...?」

仔犬のような瞳で見つめる櫻ちゃん。


「着替えくらいは自分でしなさい」

私はこの部屋を片付けなくちゃ───
気合いを入れて腕の袖を捲りあげた。

「風邪の時くらい優しくしてくれてもいいのに...」

櫻ちゃんは膨れっ面になりながらも渋々新しい服に着替えると大人しく布団をかぶった。

「どうやったら、この短期間でこんなに散らかるの?」

「前の家では羽菜ちゃんが片付けてくれてたもんね」

櫻ちゃんはお説教しながら散らばった漫画本を集める私を目で追いながら、どことなく嬉しそうだ。

お説教の効果はなさそうね..

私はため息をひとつ落として、立ち上がる。

「リビングの片付けと、
おかゆ作ってくるから
櫻ちゃんは大人しく寝ててね。」

私が部屋を出ようとドアノブに手を掛けた。

「羽菜ちゃんっ」

それを櫻ちゃんが焦ったように呼び止めた。

何?───

私がドアノブに手を掛けたまま、首を傾げる。

「早く戻って来てね」

あのリビングの状態で不可能だろうと思いながらも「早く片付けてくるから、櫻ちゃんはゆっくり寝てて」安心させるように優しく諭すと櫻ちゃんは納得したようにうんと頷きながら目を閉じた。