ぼくが元気ならいい...なんて
そんな可愛いこと言われたら
何でも許してしまう。

羽菜ちゃんはぼくをキュン死にさせる気か。

ぼくは胸を押さえてフローリングに仰向けに倒れこんだ。

今日は色々なことがありすぎて
心臓の寿命はかなりすり減ったような
気がする。

最後にあの男が羽菜ちゃんに
向けた優しい目...何も思ってない女に
向けるものではない。

あいつも羽菜ちゃんのこと好きなんだろうな...

羽菜ちゃんと同じ職場で...
ぼくよりも大人で...
顔だってなかなか...しかも、料理という
共通の趣味がある...

これってかなり不利じゃないか....?

もしあいつが告白したとして
羽菜ちゃんはどう思うのだろう...

「あ~ダメだーー」

湧き出てくる嫌な想像にぼくは
頭をわしゃわしゃとかきしだいた。

くそっ

これじゃあ、あいつに勝てないと
負けを認めてるようじゃないか...

自分らしくない...

ぼくは人一倍負けず嫌いなんだ。

相手が誰であれ、
この勝負だけは絶対に負けられない...

何も知らない羽菜ちゃんは幸せそうにスヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てている


可愛いすぎて、ムカつく...

ぼくは眠っている羽菜ちゃんの白い小さな手を
そっと握ると羽菜ちゃんは無意識にキュッと
握り返した。

羽菜ちゃん..

この手はぼくを必要としてくれてる..?

必要としてくれるなら
ぼくは例え地球の裏側いたって
飛んでいって絶対に離さないから...

櫻介は羽菜の手の甲に
優しく口づけをすると、
起こさないようにそっと部屋を出ていった。