年下御曹司の箱入り家政婦

僕はマンションを飛び出すと一目散に駆け出した。

そして二人の前に立ち止まると
呼吸を整える。

「羽菜ちゃんを返して···──」

今すぐ男から引き剥がしたい気持ちを
なけなしの理性で押さえる。

目の前の男は僕を見つめたまま
何の反応もない。
その変わらない表情に
心のうちが読み取れない。

しかし、近くでその男を見ると、
格好いい部類に入る
顔立ち(僕よりは劣るが)に
苛立ちと焦りが更に込み上げてくる。

俺は男の背中で眠る羽菜ちゃんに駆け寄ると
羽菜ちゃん起きて───
必死に揺さぶる

しかし、僕の焦りをよそに羽菜ちゃんは気持ち良さそうに眠って起きそうにない。

他の男の背中で眠るなよ(怒)

......てか、胸が男の背中に当たってるじゃん!

しかも、何で羽菜ちゃん今日に限ってスカート履いてんの!?

白い太もも丸見えだし(汗)


気が狂いそうな嫉妬心に奥歯をギリっと噛み締める。

相手の男はどう見ても僕より年上で落ち着いてみえる。羽菜ちゃんとの年齢差にコンプレックスを感じている僕が一番ライバルにしたくない年上の男だ。

そんな年上男に余裕がない自分を見せたくない。

「送ってくださってありがとうございました。後は僕が送るので羽菜ちゃんを下ろしてください。」

男の前で懸命に笑顔を張り付ける。

早く下ろせよ(怒)────

無表情でこちらを見つめる男に
心の声が毒づき笑顔がひきつる。

しかし、相手の男から出た言葉は
僕の神経をもっと逆撫でする言葉だった。

「────俺は君のことを知らない。
知らない男にうちの大事な社員を託すことはできない。」


こちらを睨み返すその瞳に
明らかに僕に対して敵対心を燃やしていることが伝わってくる。

マジかよ...

それでなくても仕事で羽菜ちゃんと逢えない時間が増えたのに同じ職場にライバルが働いてるんじゃ、心配で気が気じゃない。

こんなどこの誰ともわかんねぇ、ぽっと出の男に羽菜ちゃんを奪われたくない。


────絶対に、嫌だ...


僕は再び歩き出そうとする男の腕を
咄嗟に掴む。

───羽菜ちゃんから早く
その汚い手を離せよ...

僕は男を睨み付けるが、相手も鋭い眼光を
こちらに向けてくる。