年下御曹司の箱入り家政婦

青年というよりはまだ少年のような
あどけなさの残る顔立ちだが、
男から見ても目を引くような綺麗な顔をしている。

しかし、そのキッと敵意を含んだ彼の瞳に
夢島の“大切な人”という言葉が脳裏を過った。

「ハァハァ...羽菜ちゃんを返して────」

未だに息の上がっている様子を見て
彼の必死さが嫌というほど伝わってくる。

俺の返答も待たずに彼は夢島に駆け寄ると
「羽菜ちゃん、起きて!!」と夢島を揺さぶる。

しかし夢島は起きる気配はない。

起こすのを諦めた彼は「送ってくださってありがとうございました。後は俺が送るので羽菜ちゃんを下ろしてください」と焦りの表情を浮かべている。

よっぽど俺に触れられるのが嫌なのだろう。

しかし、俺も返してくれと言われて素直に返すほど優しくはない。

「俺は君のことを知らない。
知らない男に大事なうちの社員を託すことはできない」

そう言って彼を無視して再び歩き出そうとするが、阻止するようにガシッと腕を掴まれる。

俺はハァっと煩わしげにため息を吐き、
腕を掴んだまま離さない彼を睨み付けた。

彼も負けじと鋭い目付きでこちらを睨み付ける。夢島を挟んでお互い譲らないにらみ合いが続いた。

しかし、二人の間ではりつめていた緊張は

「あれっ?櫻ちゃん...?」

寝ぼけ眼を擦りながら
ムクッと起き上がった夢島によって
破られた。

彼は俺に向けてニッと勝ち誇ったように笑みを浮べた。

「羽菜ちゃん、飲み過ぎだよ!ホラ降りて!!」

そう言ってすぐさま俺の背中から夢島を降ろした。

そして、今度は「おんぶするから羽菜ちゃん背中に乗って」と、夢島に背を向けて
しゃがみ込む。


夢島は「は~い...」と素直に従うと
なんの躊躇いもなく
彼の背中におぶさった。

そして、
「櫻ちゃん...眠いよ...」
そう言って夢島が彼の首筋に猫のように額を擦り付けてるあたり、彼にかなり心を許していることが分かる。