年下御曹司の箱入り家政婦

それに夢島が何に悩んでいるのか知りたくてしかたがなかったのもあるのだが。

しかし、なかなか悩みを打ち明けてくれない夢島にしびれをきらして、男がらみか?と適当にかまをかけてみたのだ。

焦ってむせる夢島に俺の心臓がズキッと痛む。

聞きたくないのに知りたい衝動にかられた俺に夢島は“大切な人”だと悪気なく心臓に刃を突き刺す。

付き合ってはいないし、恋愛対象というわけではないのに、その大切という言葉に俺には計り知れない重みを感じたのだ。

それ以上、夢島の口から他の男のことを聞きたくなくて話題を変えてしまうあたり、俺は臆病者だとおもう。


酔い潰れた夢島は俺に対しての警戒心はゼロだろう。

スースーと俺の背中で可愛い寝息をたてる夢島をこのまま家に持ち帰りたい衝動にかられる。

男は狼なんだぞ?────

夜空に輝く満月を見上げながら、俺は小さく呟いた。

しかし、夢島はスーピーと幸せそうな寝息で返して俺はフッと目を細めた。

そして、あまりにも無垢な眠り姫に狼の牙も引っ込んでしまう。

「確か、このパン屋の向かいのマンションって言ってたよな...」

話に聞いていたパン屋の向かいのマンションは一人暮らしの若い女の子が住むにはかなり新しくて大きなマンションだ。

こいつはお嬢様か?───俺は疑問に感じながら高層のマンションを見上げた。

そして、目線をマンションのエントランスに戻すと今度は一人の青年が目に入った。
いや、目に入ったというよに目に飛び込んできたと言っても良いだろうか...
なぜなら、彼がかなりの形相でこちらに向かってもうダッシュしてくるからだ。

めちゃくちゃ睨まれてるけど、俺か?───
後ろを振り返るが俺達以外、人は歩いてない。

振り返った目線を再び前に戻すと
青年はすでに俺の目の前で
ハーハーと肩で息をしながら
立ち止まっていた。