年下御曹司の箱入り家政婦

高校3年の夏、私の両親は交通事故で
帰らぬ人となった。

祖父母もすでに他界し、親戚も遠方で
そこまで親しく付き合っていなかったため
私は一人暮らしをする決意をしていた。

だが、父と母の旧友だという
このお屋敷のご主人と奥様に空き部屋は沢山あるから我が家においでと誘われたのだ。

初めは父母の旧友といっても赤の他人の家に転がり込むなんてと断っていた
だが、このお屋敷のおじ様とおば様は少々...いやかなり強引な方たちで半ば強制的に居候することとなった。

しかし、ただ居候するのは気が引けるので家政婦として雇ってもらうことで折り合いをつけたのだった。

それから9年の月日が流れた。

今では家族同然のように毎日楽しく暮らしている。

「もう6時半か、そろそろ皆起きてくるかな」

私は食卓テーブルに四人分の料理を並べながら壁にかかった時計をちらりと見た。

今日の朝食はいつもより豪勢だ。

コップに野菜と果実のスムージーをそそいでいると「羽菜ちゃんおはよう」
一番のりはおじ様だった。

「おじ様、おはようございます」

私はニッコリと微笑むと「今日は朝からご馳走だな」と嬉しそうにのぞきこんでいる。

天草誠之介(53)

老舗家具メーカーAMAKUSAの取締役社長で
この天草家の主だ。

AMAKUSAは日本最大級の家具メーカーの1つで素材にこだわった芸術作品のようなデザインが老若男女、あらゆる世代から愛されている家具ブランドだ。

おじ様は社長という立場にも関わらず菩薩のように優しい。

「あっ!おじ様!皆揃ってからですよ!」

ブドウをつまんで食べようとしているおじ様は「1つだけ」と言いながら2つ目も口の中に放り込んでいる。