年下御曹司の箱入り家政婦

「...えーっとですね...」

相手が新さんだけにこの手の話は
話しにくいんですけど.....
しかし、じっとこちらを見つめて私が答えるのを待つ新さんに話さないといけない雰囲気が漂う。

とりあえずお酒の力を借りてみよう。

私がビールをグビッと口に含んだ瞬間
「男がらみか?」と
新さんが良いところを付いてきた。

ゲホッゲホッ

私は飲んでいたお酒が気管に入り
豪快に咳き込んだ

新さんは「やっぱりな」と顔色も変えずビールをグビグビッとあおる。

「あの、男と言っても
付き合ってるというのではなくて...
なんといいますか...」

私はおしぼりで口元を拭きながら
どう話そうかと考える。

「なるほど、告白でもされたのか」

新さん、鋭いな...
そしてお酒のせいかいつになく饒舌...

「はい...
でもどうしたら良いのか分からなくて...」

私は櫻ちゃんを突き放すことも受け入れることもできない...

「簡単なことだと思うけど、
好きじゃないなら断ればいい」

新さんの安易な言葉に私はムッと
唇を噛み締める。

「そんな簡単なことじゃないんです。
私にとってはとても大切な人だから...
簡単なことじゃないんです」

櫻ちゃんには振り回されてばかりだけど、
櫻ちゃんがいてくれたから私はすぐに天草家に馴染めることが出来た。
寂しいときもいつも櫻ちゃんがそばにいて笑わせてくれたから、両親の死を思い出として受け入れることができたのだ。
櫻ちゃんは私にとっては心許せる唯一の存在だ。

私は櫻ちゃんに姉離れしろって言ったけど櫻ちゃん離れ出来ないのは私の方なのかもしれない。

バッグの中で携帯がブルブル震えて私は新さんに「ちょっとすみません」と一言断りをいれてメールを開いた。

『羽菜ちゃん、もう仕事終わった?』

私は櫻ちゃんからのメールにホッと胸を撫で下ろす。

現に毎日必ずくる櫻ちゃんからのメールが来ないだけで事故でもあったのではないかと心配になるのだ。

『今日は仕事場の人とご飯食べて帰るから遅くなります』とだけ返信して携帯をバッグにしまった。