年下御曹司の箱入り家政婦

「結婚指輪くらいは奮発させてよ」

櫻ちゃんの言葉に私は
「フフッそうね..
ありがとう。一生大切にするね」
と薬指に光る指輪を見つめながら呟いた。

櫻ちゃんはその様子を見て満足げに微笑む。

そしてグッと私の腰を引き寄せると
「羽菜ちゃん、愛してるよ..」
そう呟いてこの場でキスをしようとしてきた。

私は「ちょっとっ」
と櫻ちゃんの唇を咄嗟に手で塞いだ。

「櫻ちゃん、ここ外だし、一応お父さんとお母さんの前ってこと忘れないで」

「あっ、そっか..
じゃあ続きはあとでね」

そう言って私の頭をポンポンと軽く叩くと
再び墓石の前に跪いて口を開いた。

「おじさん、おばさん。
先程見ての通り、羽菜さんがプロポーズを受け入れてくれました。
きっと、天国で僕達の結婚を認めてくださってますよね?直接聞くことができないので認めてくれたことにします。
僕は羽菜さんといると、とても幸せです。
羽菜さんをこの世に生んでくれてありがとうございます。
僕はこのかけがえのない存在を一生かけて守っていきます。
だから、安心して天国で見守ってくださいね」

私はグスンと鼻をすすった。

きっと櫻ちゃんとの未来は騒がしくて
大変に違いない...

だけど櫻ちゃんの願い通り
私は寂しさなんて感じる暇はないだろう..

しかし、その騒がしい未来は
わくわくと心が弾むような
私にとってはとても魅力的ものなのだ。