年下御曹司の箱入り家政婦

「櫻ちゃん、
ちゃんと座って食べて」

私が少し強めの口調でおば様に加戦した。

櫻ちゃんはチラリと私を見ると
「はい」と急にしおらしくなって
私の隣に腰を下ろす。

そして椅子に座った途端、
箸を取り本格的に食べ始めた櫻ちゃんは
「そういえば羽菜ちゃん、今日は何しにここにきたの。」
思い出したように私に投げ掛けた。

その問いに私の心臓がドキっと飛び上がる。

「ほ、ほら、旅行のお土産渡しに来たのよ」

嘘はついていない。
櫻ちゃんのことを報告するついでにお土産も渡しに来たのだから。

そう思いつつも、変なところ感の鋭い櫻ちゃんに気づかれないかと内心ヒヤヒヤしながら顔色をうかがう。

櫻ちゃんは私の答えに「ああ、お土産ね」
と納得したようで再び食事を再開した。

思わず、フウッと安堵の息を漏らす。

そして、夕食を済ませ買ってきたケーキを食べ終えると「泊まっていけばいいのに」と寂しがるおば様を明日も仕事があるからと
なんとか振り切って玄関までやってきた。

「母さんが寂しがるから、二人とも時々は顔見せに帰ってやってくれよ。」

おば様のためと言っているおじ様も
表情は少し寂しそうだ。

「はい。今度は二人の仕事が休みのときにゆっくり帰りますね」

私は微笑みながら言った。

「今度帰るときは二人とも泊まってってね。あっ、それと羽菜ちゃん、勇気出して頑張るのよ」

おば様は意味ありげに付け加えると、私に向かってウインクしてみせた。

「おばさまっ」

私はいきなり爆弾を落としてくるおば様に
ヒヤリと肝が冷える。

案の定、櫻ちゃんは「なになに?」と会話に割り込んできた。

これ以上、ここにいたら何を言われるか分からない。

私は尚も「ねえ?何を頑張るの?」としつこく聞いてくる櫻ちゃんの背中を押して「それじゃあ、おじ様おば様今日はご馳走でした。おやすみなさいっ」と玄関から逃げるように飛び出した。