「でも、あっさり諦めてやるのは
癪だから最後に櫻介に意地悪してから
諦めます。」

蘭ちゃんは小悪魔のような笑顔を浮かべて
言った。

「意地悪ってどういう?」

私は恐る恐る尋ねる。

「安心してください。
可愛い意地悪です。
少し危機感を煽って精神的疲労を与えるだけですから。」

可愛い意地悪という割に精神的疲労って
どういう内容なのか好奇心に駆り立てられるけど聞くのも少し怖い気もする。

「ほどほどにしてあげてね」

私は苦笑いをしながら言った。

櫻ちゃん大丈夫かな?

蘭ちゃんの手の上で転がされて
狼狽する櫻ちゃんを思い浮かべる。

心配しながらもどんな意地悪したのか
今度蘭ちゃんに聞いてみようと思いついて
一人ひっそりと笑んだ。

すると、バスのスピーカーから私が降りる停留所を知らせるアナウンスが流れたので降車ボタンを押す。

蘭ちゃんもちゃんと前に進みだしたのだから
私も見習わないと。

私は決意を改めて固めると
緊張感を胸にバスを降りた。