私の反応を見て困ったように
笑みを浮かべる櫻ちゃん。
本当はもっとちゃんとしたところで伝えたかったのにな───
そう言って櫻ちゃんは、私の頬を両手で包み込んだまま顔を横に傾けると触れるだけの優しいキスをした。
そして、ゆっくり唇を離す。
まるで石像のように固まっている私をみて櫻ちゃんは思わずフッと笑みをこぼした。
「これでさすがに分かった?
僕は出会った時からずっと
一人の女性として好きなんだ。
姉だとは思えないけど、羽菜ちゃんが大切なことに変わりはないよ。
だからもう泣かないで...
僕がずっとそばで羽菜ちゃんを笑顔にするから...」
櫻ちゃんが私を好き...?
姉ではなく女の子として...?
そんなことあるはずがない...
冗談だと思いたいけどそれが嘘ではないのことは櫻ちゃんの真剣な瞳に見れば分かる。
でも、それは困る。私と櫻ちゃんの間に何かあってしまっては、おじさまやおばさまに申し訳がたたない。
「だ、ダメだよ...私と櫻ちゃんは...」
私は後退りしながら
両手を思い切り横に振って
櫻ちゃんから距離をとる。
「僕と羽菜ちゃんは弟でもなければ姉でもないよ。血なんて全く繋がってないだろ?
ただの男と女だよ」
血のつながりはないのは分かってる...
でもあまりにも家族として過ごした時間が長すぎたのだ。
「でも...私は...櫻ちゃんのこと」
「分かってる...弟みたいに思ってるんだろ?」
そう言ってじりじりと距離を再びつめてきた。
ギラリと光る櫻ちゃんの瞳に危機感を感じて私は逃げようとするが時すでに遅かった。
でもこれからは弟だなんて思わせない───
再び櫻ちゃんは顔を近づけると
今度は羽菜の唇を荒々しく塞いだ。
なんとか逃げようともがくが、櫻介の大きな手によって後頭部をがっちりとホールドされ
ている。
「んっ...............櫻ちゃ.....」
名前を呼ぼうと開いた羽菜の唇を
櫻介の舌がすかさず割って入ってくる。
「──…んッ…」
羽菜の逃げ惑う舌を櫻介の舌が執拗に追いかける。
櫻介の胸をグッと押してみるが、逞しい腕にがっちりと捕らえられ、びくともしない。
チラリと薄目を開けると完全にオスの顔になってしまっている櫻ちゃんに身体がゾクリと反応する。
───こんな櫻ちゃん知らない
「んんっ.............」
優しく絡めてくる櫻介の舌に
次第に気持ち良さが増してくる。
初めて疼く身体の感覚に私は焦りを覚えた。
まずい......このままではいけない...



