年下御曹司の箱入り家政婦

「櫻ちゃん、今朝も社用車で出勤でしょ?」

「うん。」

「一緒の会社なんだから蘭ちゃんも乗せていってあげて。2、3日はあまり激しい運動は駄目だってお医者さんに言われてるのよ」

「え〜っ?!」

通勤くらいじゃ激しい運動にはならないと思うんだけど!と羽菜ちゃんに突っ込もうとしたけど羽菜ちゃんの鋭い視線に
「分かったよ」と仕方なく了承した。

なんだよっ、最初は蘭と呼び捨てで呼ぶだけでも怒ってくれてたのにっ. . .
あれは嫉妬からではなかったのか?
それに蘭にキスされたときも、羽菜ちゃんは泣きそうな顔をしていた。それもぼくの勘違いだというのか?

羽菜ちゃんの気持ちが分からない....

やっぱり僕は羽菜ちゃんにとって
まだ弟止まりなのだろうか. . .

気持ちが沈んでしまった僕は
食べ終わると早々に立ち上がった。

「櫻ちゃん、はいっ、お弁当!」

羽菜ちゃんのお弁当にいつもなら
喜んで飛びつくところだが、
今日はそんな気になれなかった。

僕は「ありがと」と
わざと捻くれた声色でお礼を言った。

そして、
「平尾さん、行くよっ」
蘭を一瞥してベランダへと向かう。

目も合わせない僕に羽菜ちゃんも
違和感を感じたに違いない。

「櫻ちゃん...?」
 
戸惑う声が後ろから聞こえたが
僕はそれを無視して部屋を出た。