年下御曹司の箱入り家政婦

「その代わり、今度、生意気な口を聞いたら
容赦なく怒るから覚悟してね」

毅然とした態度で忠告する羽菜ちゃんは
蘭が再び首を縦に振ると優しく顔をほころばせた。

羽菜ちゃんは普段、穏やかな分、
怒らせたときの怖さは半端ない。

それは僕が一番よく知っている。

だけど羽菜ちゃんが蘭にそう言ったのは
蘭が他人に作っている壁を
取り除いて心を開いてもらうためだろう。

そういう人の心を瞬時に汲み取って
配慮できるところも大好きだ。キュンっ♪

僕はこんな状況下にも関わらず
不謹慎にも羽菜ちゃんへの愛が溢れ出す。

そんな僕の心情は顔にも出ていたのだろう

羽菜ちゃんに「なに櫻ちゃんニヤニヤしてるの?」と冷ややかな視線を向けられ
すぐに真顔に戻した。


「じゃあ、もう遅いから二人は自分の部屋に帰って」

「僕も心配だから羽菜ちゃんとこのソファーで今日は寝るよ!」

と心配するふりをして、単に羽菜ちゃんともっと一緒にいたい口実なのだが。

「じゃあ、俺も泊まる!!」

俺の口実に斗真も乗っかってきたので
「遊びで泊まるんじゃないんだから
お前は自分の家へ帰れよ!」
自分のことは棚に上げ、斗真を厳しく叱責する。

しかし、「二人とも帰りなさい!!」と
羽菜ちゃんに二人まとめて追い出されてしまった。