年下御曹司の箱入り家政婦

羽菜ちゃんの言葉に
蘭は黙って聞いているだけだ。

「目眩とかなければ
問題ないとおもうけど、
一応念の為、明日一緒に病院で
検査してもらいましょう。」

羽菜ちゃんの言葉に蘭は
「検査なんてしなくてもいいわよ。
私が死んだって誰も悲しまないんだからっ」
こちらに背を向けへそを曲げる。


駄々っ子のような態度に僕は
はあっと呆れたように息を吐いた。

すると、それまで優しい口調だった
羽菜ちゃんが
「死んでもいいなんて何を
馬鹿なこと言ってるの!!」
いきなり声を荒らげたので
僕も斗真も蘭さえもギョッと目を見開いた。


そして羽菜ちゃんもハッと我にかえる。

「ごめんなさい。
私、早くに親を亡くしてるからつい。
きっと蘭さんは死にたいわけじゃなくて
ただ寂しいだけなのよね。
私もそうだったから。
親を亡くしたときは何度も一緒に
消えてしまいたいと思ったもの。
一人って寂しくて苦しいわよね」

羽菜ちゃんは昔の自分を重ねて
声を震わせた。

蘭はじわりと目から涙が溢れだして
咄嗟に両手で顔を覆う。

「でも、大丈夫!!
もう一人じゃないわ!
寂しくなったらうちにいつでも遊びに来て。私もそうやって櫻ちゃんに助けてもらったから。ねっ?」

蘭は顔を隠したまま
コクコクと頷いた。