年下御曹司の箱入り家政婦

「おわっ、お前何やってんだよ!
離れろよ!!」

僕は体を起こすと抱き着く蘭を
なんとか引き剥がそうとするが
「いや!離れない」
蘭はしっかと抱きついてきて離れない。

「いい加減にしろよ!」

僕は流石に頭にきて
怒鳴りつけた。

「じゃあ、一度でいいから
抱いてよ!!
そしたら諦めるわ!!」

「無茶言うなよ!
僕は羽菜ちゃん以外、食指は動かない!」

「何であの人なのよ!
何で私じゃ駄目なの!」

蘭はそう叫びながら
いきなり僕の唇を塞いだ。

「んっ、、」

僕は不意打ちのキスにギョッと目を見開くと
嫌悪感からゾワッと全身の毛が逆立った。


その時、斗真によって開け放たれていた窓から「櫻ちゃんなんかさっきから騒がしいけどどうしたの?」と羽菜ちゃんが顔を覗かせた。

そして羽菜ちゃんは
目の前の光景に固まる。

僕もこの最悪な状況に固まった。

「ご、ごめん」

そして羽菜ちゃんは一言呟くと
慌てて顔を引っ込めた。
 
やばい!!この状況、最悪だ!!

僕は蘭を力任せに引き剥がすと
「うわっ、羽菜ちゃん、違う!!
誤解だ!!」
急いで羽菜ちゃんを追いかける。


ベランダに出て穴を潜ると
自分の部屋に入ろうとする
羽菜ちゃんの腕を掴んだ。

「羽菜ちゃん、大きな誤解だよ!
説明させて!!」

僕の言葉に顔を上げた羽菜ちゃんは
今にも泣き出しそうで僕は目を見開いた。

「羽菜ちゃん...?」

僕が呟いたその時、
僕の部屋からガシャンと大きな音が
聞こえて僕と羽菜ちゃんはビクッと
肩を震わせた。

次に
「わっ、櫻介、大変だ!蘭ちゃんが!!」
斗真の鬼気迫る叫び声に
僕と羽菜ちゃんは顔を見合わせると
急いで僕の部屋へと戻った。