年下御曹司の箱入り家政婦

「なんであの女なのよ。
私の方が櫻介のこと幼稚園ころから
ずっと見てたし、想ってるわ」


「でも、僕が好きなのは羽菜ちゃんだ。
平尾さんに想われたところで 
嬉しくないから
いい加減そろそろ諦めてくれないかな?」

「だから、その平尾さんてのやめてよ...」

蘭はカクテルの入ったグラスを握り締めながら、声を震わせた。

「櫻介〜、流石に冷た過ぎるよ。
蘭ちゃん、泣いてるじゃんかぁ」

斗真が僕の隣で蘭をどう慰めてよいのか分からず一人テンパっている。
しかし、
斗真とは反対に僕は眉一つ動かさなかった。
蘭の気持ちに応えられないのに中途半端に慰めるなんてことはしたくない。
それに申し訳ないけど羽菜ちゃん以外の涙は僕にとっては汗くらいの認識だ。まったくもって心に響いてこないのだ。

 
プライドの高い蘭は「泣いてないわよ」
とふいっとそっぽを向いた。

その可愛げのなさに
僕はハアッと大きな息を吐いた。

「私は絶対に諦めないんだから」  
 
蘭は頑なに僕を諦めようとはしない。

なぜそんなに僕に執着するのか
僕には思い当たる節がない。

確かに僕は人よりモテてきたが
蘭の僕に対する執着は異常だ。

蘭は性格はキツイけど容姿は一般的にいえば
美人なのだから(僕の好みではないけど)
探せば僕より良い条件の男なんて沢山いるとは思うのに...