「あっ、そんなことよりこれを見てくれ」

俺はつけているネクタイを
斗真の前にかざして見せた。

「羽菜さんに買ってもらったネクタイだろ?もうその自慢話、うんざりなんだけど」

斗真はしつこいと言わんばかりにシッシッと手で僕を追い払う仕草をする。

「違う!よく見ろ!
このネクタイについてるクローバーのピンだよ!
羽菜ちゃんのネックレスとお揃いで買ったんだ」

「可愛いだろ?」と自慢げに片眉を上げる僕に
無の表情で少しの間ジッと見つめていた斗真は
「あっそ」と興味なさげに自分のデスクに向かった。

その態度がムカついた僕は斗真の頭をパコンと一発叩いてから
改めて仕事に取り掛かった。
斗真は「いってぇ」とこちらを睨んでいる。
僕はそれに構うことなく仕事モードにきりかえた。

しかし、今度は何者かによって僕の方が
ガシッと掴まれた。

今度は何だと後ろを見ると
不機嫌にこちらを見下ろす蘭だった。

「平尾さん、何ですか?」

羽菜ちゃんとの約束通り、あの日から蘭を苗字で呼んでいる。

蘭はその呼び名に益々、表情が
険しくなる。

「今日、仕事終わったら話があるから!」

「僕はない」

「なら、家までおしかけるわ。」

腕組みをしてこちらを見下ろす蘭に
僕は面倒くさそうに顔を歪める。

「分かった。
今日だけだからな。食べながら話そう」

蘭は納得したように自分の席へと向かおうと踵を返した。


「斗真、今日は3人で飯食いに行くぞ」

僕は隣の斗真に声を掛けると
斗真は「行く行く」と嬉しそうに尻尾を振る。

「ちょっと、何でよ!?」
 
振り返った蘭が不満げに口を挟む。

「斗真も一緒じゃないと
僕は行かないからな」

こちらも交換条件を提示した。

「分かったわ」

蘭は渋々その条件をのんだ。