Side櫻介


「櫻介、任せてた資料ちゃんと進んでんだろうな」

遠くの席で叔父が指圧器で肩の壺を
懸命に押しながら問い掛けた。


僕はパソコン画面に視線をやったまま
「はいはい、今やってまーす」
と一切、感情のこもっていない返事を返す。

誰もが憂鬱な月曜日、 
普段だってやる気が出ない曜日なのに
旅行を終えての仕事はますます身は入らない。

ここに羽菜ちゃんがいたら
ヤル気だって出るんだけどな...

羽菜ちゃんの制服姿、絶対可愛いし!

思わず想像してニヤけてしまう。

それで「櫻ちゃん、お疲れ様」ってコーヒーでも差し出してくれたら残業だって苦ではない。

あぁ、それいいな♫
羽菜ちゃん、ウチの会社に入社してくれないかな。

パソコン操作をしながらも
頭の中ではお花畑の妄想を繰り広げている
俺を現実に引き戻すかのように誰かが俺の肩を思い切り揺すった。

「なあなあ、櫻介櫻介!」

俺を現実世界に引き戻した不届き野郎は
隣の席の斗真だった。

「何だよ?(邪魔しやがって)」

「今日、帰り飲みに行かね?」

「行かない」

斗真と外食VS羽菜ちゃんの手料理なら
圧倒的に羽菜ちゃんの手料理だ。 
しかも週初めに行くか馬鹿め。

即答する僕に斗真は
「なんだよぅ、いいじゃんたまにはよう」
口を尖らせていじけている。