年下御曹司の箱入り家政婦

「良い買い物をしたね」

車に戻ると櫻ちゃんは
私とお揃いのネクタイピンに
ご満悦の表情を向けている。

私は呆れと精神的な疲れが合わさってハアッと大きくため息をついた。

しかし櫻ちゃんは気にすることなく
早速購入したネックレスの包みを開けている。折角、店員さんが綺麗にラッピングしてくれたのにも関わらず、櫻ちゃんは早く実物に触れたい一心で包装用紙をビリビリと容赦なく破いていく。


そして、よつ葉のクローバーのネックレスを取り出すと
「羽菜ちゃん、つけるから後ろ向いて」
嬉々とした表情で言った。


私は言われるがままに後ろを向く。

「髪の毛が邪魔だな。
羽菜ちゃん、ちょっと髪上げて」

早く早くと急かす櫻ちゃんに
私は両手で髪の毛を上げてみせた。

すると、後ろで櫻ちゃんのゴクリと息をのむ声が聞こえた気がした。

そして髪を上げているのに
待てど暮らせど櫻ちゃんが
ネックレスをつける気配がない。


「櫻ちゃん、早くつけてくれないと
腕が痛いんだけど」

腕が痺れてきた私は
今度は反対に櫻ちゃんを急かす。

「あっ、ごめん!
だって、うなじがっ」

「えっ?」

「いや、何でもない、何でもない」

櫻ちゃんは慌てた声で
ようやくネックレスをつける。

やっと腕の痛みから解放された私は
胸元に目を落とすと
よつ葉のクローバーがキラリと輝いた。

「可愛い...」

櫻ちゃんの衝動買いには困ったものだけど
やっぱり好きな人からのプレゼントは
嬉しい。

「とっても可愛いわ。
櫻ちゃんありがとう」

私がお礼を言いながら
振り返ると真っ赤な顔の
櫻ちゃんと目があった。

「なんで櫻ちゃん顔赤いの?」

私が顔を覗き込もうとすると
「なんでもないから。別にやらしいことなんて考えてないし!」
必死に顔を手で隠している。

そうか。やらしいこと考えてたのね。

不器用に誤魔化す櫻ちゃんが可愛くて笑ってしまった。