年下御曹司の箱入り家政婦

「私にはちょっとそれは
少し大人っぽすぎるわ」

私はそう言って櫻ちゃんの選んだネックレスにNOをつきつける。

そしてショーケースの中でも
比較的可愛い値段のものを選んで
「これなら(値段的にも)いいかな. .. 」
と指をさした。

シルバーのよつ葉のクローバーに
小さな宝石がついたネックレスだ。

「こんな安いので良いの?」

新さんに対抗意識を燃やしている
櫻ちゃんはその値段に若干の不満があるらしい。

何を張り合ってるのよ、この男は...

私は呆れつつも隣に立つ店員さんの前で
あまり強く突っ込むことはできない。

「とっても可愛いじゃない。
私はこれが良い!!」

櫻ちゃんに有無を言わせないよう
私は断言する。

「羽菜ちゃんが言うなら...
すみません、これプレゼント用でください」

櫻ちゃんは店員さんを呼ぶと
よつ葉のクローバーのネックレスを
指さしながら言った。

「畏まりました。
こちらのネックレスですね。
それでしたら彼女さんとお揃いでこちらの
よつ葉のクローバーのネクタイピンも
ご一緒に如何ですか?」

商売上手の店員さんは
櫻ちゃんにネクタイピンも勧める。

きっと先程の私達のやり取りをみて
上客認定されたに違いない。

櫻ちゃんは
“彼女” “お揃い”という響きに
一気に顔を輝かせた。

「お揃い...
いいですね!
それも一緒にください!!」

そして、
まんまと店員さんの戦略に乗せられた。