年下御曹司の箱入り家政婦

店の中に一歩足を踏み入れると
ライトが煌々と照らし出す高級感溢れる空間にズラっとガラスケースが並んでいた。

そして、
その奥に佇む ビシッとしたスーツを着た
スタッフが「いらっしゃいませ」と
出迎えてくれた。 

旅行帰りのこの場違いな装いに
私は萎縮しながら櫻ちゃんの元に駆け寄る。

しかし、
櫻ちゃんはすでにショーケースの中の
商品を真剣な眼差しで物色していた。

「ねぇ...櫻ちゃん、ここ高そうだよ..」

私は辺りをキョロキョロと見渡しながら
櫻ちゃんを肘で突付いた。

「羽菜ちゃんはどれがいい?」

私は櫻ちゃんの眺めている
ネックレスに目を移すと
そのプライスカードの値段に
「ヒイッ」と思わず悲鳴を上げた。

「こんなの選べないわよ。
衝動買いするような値段じゃないわ。」

私は小声で櫻ちゃんの服の裾を引っ張る。

「これなんかいいんじゃない?」

そう言って私の胸元に当てる
ネックレスの値段のゼロの数に
私は思わず絶句する。

こいつ本気だ...

しかも明らかに新さんに対抗意識を
燃やしている。

櫻ちゃんがこうなってしまったら
きっと何を言っても譲らないだろう...